コンベも終わって

 何とかTRPG−EXPO2007*1でGMをやってきました。
 帝國篇(仮題)のシステムver.0.92も、人様に(いろいろと隙間を埋めてくれれば)どうにかGMしてもらえるレベルにまではまとめ上げて、CD−ROMに焼き付けて参加したプレイヤーさんや興味をもってくれた方々に配布してまいりました。
 セッションの方はシステムの細かい点や、説明のしかた、シナリオの練りこみやマスタリングに多少問題があったものの、プレイヤーの皆さんのおかげで素晴らしいセッションにしてもらったと思います。
 ホント、プレイヤーに求めるものばかり大きくて、デザイナー&マスター側が甘えていちゃしょうがないので、そこは精進しませんと。少なくともGMの説明とプレイの仕方のガイドラインは整えないといけませんね。


 ホントはちゃんとHPでも作って、ダウンロードできるようにして、サポート記事も立ち上げたいですが、(サイト制作に関しては)まだまだ勉強不足なので……。けど近いうちには何とかしたいと思っています。
 ブログでのプレビュー*2もしばらくは続けていきます。
 帝國建国とハーマン教の国教化、そして“死の支配者”について触れた歴史の部分と、各PCスタイルの紹介、[縁]と重要人物、そして敵対者……それらの紹介までは続けていきたいですね。
 目指せ週2更新です。


 というわけで、これからもよろしくお願いします。
 まあ、しばらくは月末のコンベンションに向けて、ナイトメアハンター=ディープ関連の記事も多くなると思いますが、それも一緒にお楽しみください。

*1:札幌圏を中心としたさまざまなサークルからGMが参加する、北海道最大規模のコンベンション

*2:結局、ゲームのデータ・ルール部分の制作が忙しくて、歴史や紹介などのプレビューにまで手が回らなかったです、はいorz

ちょっと更新が滞っています。
帝國篇のルール&データ部分製作とテストプレイと、今月末のナイトメアハンター=ディープコンベンションの準備&テストプレイプレイと、あとはソードワールドやDX2ndやW:tA*1のプレイヤーをやったりしていて、世界設定が進んでいませんでした……すみませんorz
まあ、11日に帝國篇のテストプレイを行うので、その前後からは更新を行なうと思います……今まで休んでいた分までね。


できればコンベンションまでに神話&歴史とゲームコンセプト、PC用スタイル紹介は終わっておきたいなぁと思っています。
コンベ後にも、プレビューは続く事になりそうですねぇ……まぁ、もしかしたら冬に有志でオリジナルシステムコンベンションをやる事になるかもしれませんので、それに向けてというカンジで……。
なんにせよ、16日にはコンベンション本番なので、そこまで形になるように必死にがんばってみますよ!


というわけで、今後しばらく、過去の日付の日記がアップされると思いますが、帝國篇プレビューのカテゴリーで確認するようにしてください。
ちなみに次回は帝國建国の話です。

*1:ワーウルフ・ジ・アポカリプス、現代社会で人狼をやるゲーム。今回はグラス・ウォーカーの狼腹のフィロドクスをやったんで、あとは部族2つ(レッド・タロンとスターゲイザー)で部族コンプリートだ!……とか言っている場合じゃないよなぁorz

夢狩りの伝説

 話は少し戻り、魔法王国ができる前後の時代のお話。


 ある森に1人のとても美しいエルフがいました。
 彼女は透き通るような白い肌と、月の光を集めたかのように白く輝く銀髪、翡翠のような深い緑色の瞳を持ち、その姿は森の女神の生き写しのようで、とても繊細で美しく心優しい乙女でした。
 彼女は森を愛し、森の全てのものは彼女を愛し、そして森の外のものたちも彼女に惹かれて、彼女の姿を一目見ようと森を訪れるのでした。そして、その中には小さき神々*1の姿もありました。


 あるとき、闇の神と、夢の神が、エルフの乙女にあなたの望むものを与えましょうと言葉をかけました。
 乙女は最初はその申し出を断っていましたが、熱心に語る二柱の神に折れて、ささやかな願い事を伝えました。「わたしが望むものは、新たな友達と、心を通じ合うための術です」と。
 それを聞いた闇の神は、魔獣を呼び出す“召喚の魔術”を、夢の神は、夢に触れ心を通わす“夢の魔術”を乙女に教えました。
 乙女はその贈り物にとても喜び、新たな友を“奈落”から呼び寄せ*2、彼らと心を交し合い、また、森のさまざまなものたちが見る“夢”を感じ、古くからの友たちとも友情を深めていきました。


 しかし、あるときそのエルフの乙女は目覚めぬ眠りへと落ちてしまいました。
 それは、彼女が夢の深い深い所へ入っていってしまい、出て来れなくなったからだといわれています。
 それを見た夢の神は乙女を取り戻すために彼女の夢の中へ入っていって、さまざまな夢と溶け合い、“世界の見る夢”となり、闇の神は彼女の体をその闇の神しか知らぬ深き闇の中へと隠してしまいました。


 そのエルフの乙女には二人の家族がいました。
 1人は彼女の妹であるエルフ。そしてもう1人は乙女が森の外れで拾い、育てていた人間の少女です。
 残された彼女たちは、しばし悩んだあと、乙女の想いを継いで“夢”と“魔獣”の導き手になろうと決心しました。乙女がいなくなって嘆き悲しんでいるものたちがたくさんいます。少しでも彼らの慰めになればと、二人は夢の技と魔の技をもって、さまざまなものたちの思いに触れて、癒していこうと思いました。
 しかし、人間はすぐに老いて死んでしまいます。
 それでは多くのものを慰められないと思った乙女の妹は、人間の少女に長く生きるための方法を教えました*3。また、少女も自分ひとりでは難しいだろうと、その技と乙女の想いを他の人々に教えました。そうすれば彼女が老いても、他の人々が慰める事ができます。
 こうして、人間とエルフの中に“夢狩り”と呼ばれる魔法使いが生まれました。


 彼女たちは“夢”の意味を知り、人々や妖精たちの心を癒し、怨霊や悪夢*4を寄せ付けぬように、その技をふるっていきました。
 普段は(争いを避けるために)森や谷の奥に隠れて住んでいましたが、魔法王国の崩壊の後は、各地に打ち棄てられたルーンに怨念がたまって悪さをする事を防ぐために、ときおり人里に下りて、怨念を払ったり、人々を癒したりしたのでした。
 そしてのちには彼女らが集まって住む“夢の谷”から、村や町に“夢狩り”が送られるようになり、その村や町のさまざまな儀礼を取り仕切るようになったのです。


 彼女たちは、人や、妖精や、動物や、森や、建物や、さまざまなものが“夢”を見て、それゆえにさまざまな幸せや悲しみを得る事になるのだという事をわたしたちに教えてくれます。
 だから、彼女たちの言葉に耳を傾けてみてください。
 それがあなたの魂と、彼女たちの運命を救う事になるのですから。

〜放浪民の語り部が村の子供たちに語った言葉より

*1:化身の姿をとって大地に降り立っている

*2:“奈落”の魔獣を友と呼べるのかと疑問を持つ人は多いかもしれませんが、全ての魔獣が邪悪な思いを持っているわけではありませんし、乙女は分け隔てなく友と接する気持ちを持っていたのです……そして、少し行いの悪い友にも、その面倒を見てやらないとという義務感も。

*3:このため、夢狩りは普通の人間の倍の時を生きる事ができるのです

*4:これらは悪い“夢”の現れだと言われています

元観光名所だった聖女と15人の熱き魂を持つ漢ども

 ブレイド・オブ・アルカナ3rdをやってきました。
 しかも、もしかしたらキャンペーンになるかもしれません。なぜならやったシナリオは公式のキャンペーン・シナリオ集の『サン・オブ・ダークネス』の第1話で、こちらのポジションはPC3……FEARのシナリオだと、PC3あたりからは扱いがテキトーになってくる印象はありますが*1ブレカナなら大丈夫。ちゃんとキャンペーン通しての特殊因果律だかというイカした設定がついてくるので、シナリオで活躍できなくてもそれを前面に出して暴れる事が出来ます!


 まあ、まだシナリオ第1話やっただけなので、シナリオで活躍できるポジションかどうかは分かりませんが、初期設定はお気に入りです。
 なぜなら、PC3は60年ほど前に魔人を倒したけど、相手に呪われて石像になって、ずぅっと観光名所になっていたけど、魔人復活と共に呪いが解けた(らしい)ので、自分が生まれた時代から遥か先の時代に戸惑いながらも、魔人を倒すため頑張るという、そんなキャラクターですよ。
 これは凄いでしょ。
 だって、他のPCと変なPC間因縁を結ぶことになったとしても、「昔、観光地で見た、あの石像か!」で話のかたがつくんですよ!
 ……orz


 まあ、それはともかく、どのような活躍をしたかについては、市販シナリオの上に、こちらもあまり余裕が無いのでw*2今は詳しくは書けませんが、とりあえず「みんな、DPが下がると共にマローダーに堕ちていきそうになるロールプレイを嬉々としてしまくるのを、ちょっとは自重しろw」と思ったことだけは書いておきますw
 あ、あと、一番印象に残ったキャラクターはわたしのキャラが連れていた15人の熱い魂を持つ親衛隊*3でしたw


 自分のPCの紹介くらいは軽くしておきますか。
『シグリッド・ヘルデンハンマー』 78(19)歳 女
 コロナ・アングルス*4・マーテル*5
 貴族の生まれだが、教師として慕っていた者が魔に堕ちてしまったので、それを止めるために『15人の熱き魂を持つ騎士』を連れて闘いに向う。
 何とか倒したけど、呪われて石化して、観光名所になってしまう。
 しかし3年前に呪いが解けて、同時に魔人となった師が復活している事を知り、何とか倒さないとと思ったけれど、自分が生きていた時代からはるか時が過ぎていて、どうすればいいのか途方にくれてしょんぼり(´・ω・`)していたら、『15人の熱き〜』の末裔たちと出会い、共に力を合わせて魔人の陰謀を止めることを誓った。
 基本的にその純真でまっすぐな瞳で男たちを(天然に)だまして配下にしていく、そんな少女。今回も騎士のうち14人が死んじゃったけど、説得して改心させた海賊たちが、枕元に立った死せる騎士たちから装備を受け取り、結局、親衛隊は15人まで補充しちゃいました*6
 彼女の行く末に、何が待っているでしょうか*7

*1:旧版アルシャードの添付1のように、たまにPC2が存在している意味が無いシナリオもあったりしますがw

*2:先にNHDレポートあげないとorz

*3:王や貴族、指導者などを表す『コロナ』のアルカナの特技に、集団で表されるNPCを配下として持つことができるものがあるので、それを使いました。能力がけっこう高くて、硬くて、強かったですw

*4:無垢な少年・少女などをあらわすアルカナ。まあ、無垢で純真なら幼くなくてもいいみたいだけど。

*5:聖職者をあらわすアルカナ。回復役。いないとGMに怒られることもある……わたしは1st時代にコンベでGMに怒られたことがあったorz

*6:FEARのゲームだと、こういう配下やアイテムとかはシナリオが終わると回復する事が多いので、時々理由付けに困る事があったりもするw ちなみに〈財力〉の特技を今度の成長で取れば、金を支払って配下の人数を20人に増やせるですよw

*7:多分、大量の親衛隊の屍だと思うw

預言者ハーマンの足跡(後編)

 その後、ハーマンとその弟子たちは“風の国”を離れ“火の国”に戻る事にした。
 火の国では、以前に対面した時にハーマンに対して怒りをあらわにしたジンの王がその国の領土を広げ、勢力を拡大しており、ハーマンたちが訪れた港町もそのジンの王の支配下に置かれていた。
 ハーマンは夜闇にまぎれてその港町を脱しようとしたが、衛兵たちに見つかり、ジンの王の前へと引っ立てられた。


 ジンの王はハーマンの姿を見るとその玉座から飛び降り、炎を纏わせた曲刀を振り回しながら、宮殿を震わせるような声でハーマンに言った。
「良くこの“火の国”に平然と戻ってくるようなことが出来たものだ」
 ハーマンはまるで眼前の炎の刀が見えていないかのように、ただ、ジンの王の顔を眺めながら、このように言った。
「私はあなたの怒りを買ってからの六年間、さまざまな所を旅し、さまざまな人と出会い、さまざまな言葉をもって神の意思を伝えてきた。それは私にとって、とても貴重な年月であった。私を“火の国”から追い出してからの六年間、あなたはこの土地で、どのように過ごしてきたのだろうか」
「わしはこの六年間、お前と話した時に感じた怒りを振り払うために、さまざまな土地を蹂躙し、多くの富と人民と領地を得た……そして今、六年前に逃したねずみをこの手に捉えることができた」
「それであなたは満たされたのか」
「いや……この六年間、毎晩毎晩、お前の言葉が頭をめぐり続けていた。自分の力の強大さを示せばそのような小さな想いからは開放されると思っていたが、どれだけ領土を増やしてもお前の声はますます大きく響くようになって来た。そして、お前を捕らえいつでも首を切り落とし、口をふさぐことができるとなっても、たとえそうしても、その声からは開放されえぬ事に、今、気付いてしまった……わしはどこまでも満ち足りぬ、救われ得ぬ」
 ジンの王は炎の曲刀を棄て、泣き崩れるかのようにその巨体を小さくしながら、ハーマンにすがりつくようにして言った。ハーマンは穏やかな口調で答えた。
「ならば、続きを話すとしよう……六年前に遮られた言葉の続きを。あなたが満ち足りぬというなら、それが満ち得るその時まで。人も妖精も、天使によって創造された不完全なものであるがゆえに、(完全なる)大神の言葉を求めている。だから、それをあなたに与えよう」


 その夜から、ハーマンはジンの王に神の教えを話し始めた。
 ジンの王はハーマンの言葉に喜び、戸惑い、涙を流して、ただただ聞き続けた。
 そして、3日後の朝、ジンの王はすがすがしい表情をして臣たちの前に現れた。
「わしはハーマン殿の、大神の言葉によってこの六年間の憂鬱から開放された。これからはハーマン殿を師父として、大神の言葉をこの大地全土に響かせるために戦うこととしよう。そして得た全てをハーマン殿に奉げよう」
 臣たちは王の突然の言葉に驚き、(血気あふれる種族であるジンとしては当然のように)その言葉に異議を唱えた。今までの王なら自分に異をはさむ臣下の者など、すぐさま斬り捨てていただろう。しかしハーマンに師事した王は、辛抱強く自分なりの言葉で大神の教えを臣下の者たちに教え聞かせ、そしてついには全ての臣を力ではなく言葉で同意させるに至った。
 しかし、その後にリュージヤを従えて現れたハーマンは、その王の申し出を断って、この“火の国”で自由に弟子たちと共に大神の言葉を伝える許可を得られるのならそれで充分だと答えた。


 それからハーマンは弟子たちと共に、“火の国”の各地を旅しながら“沈黙の大神”の言葉を人々に教え、伝えていった。以前とは違い、“火の国”でも力ある王の庇護を受けているためか、布教は順調に進み、ハーマンの教団も次第に大きくなっていった。
 しかし、ハーマンは教団として動く事よりも、少数の弟子を連れて教え歩いたり、粗末な庵を組んで、そこでリュージヤなどと問答をする事を好んでいた。



 それから3年後、“火の国”で奇妙な病気がはやりはじめた。
 人々が眠りから覚めなくなり、そして衰弱して死んでいく……そんな原因不明の奇妙な病気である。この病にかかって助かるものは誰もいなかった。
 最初は小さな村で発症したが、だんだんと“眠り病”は広がってゆき、ついにはジンの王までもがこの病気にかかってしまった。
 ハーマンの教団の者たちは“眠り病”の患者の救済へと力を尽くしたが、それが実を結ぶ事はなかった。そして、ついには直弟子の中にも“眠り病”にかかるものが現れた……リュージヤもその1人であった。


 そしてついにジンの王と、リュージヤと、多くの人々が死んでいった。
 ハーマンは嘆き悲しみ「この忌まわしき眠りは、この忌まわしき夢は!」と叫び続けた。
 それからしばらくして、“眠り病”は治まった。しかし、王を失った国は後継者争いで大きく乱れ、ハーマンたちはその後継者争いの道具とされる事を恐れて、身を隠そうとした。
 しかし、混乱は各地に蔓延しており、その争いに巻き込まれて直弟子の一人*1が命を失い、ハーマンも矢傷を受けて床に伏せった。


 ハーマンが床に伏せはじめてから半年、その病状は少しも快方へとは向かっていなかった。しかし、ハーマンはその病体をおして、その地にいる直弟子全てを集め、あらためて大神の言葉を伝えた。そして弟子たちに、神の言葉を求めし悩める人々をつれてくるように言って、自分は村の外れにある大樹の前に立った。
 弟子たちは馬や駱駝を走らせ、近隣の人々に師の言葉を伝えた。人々はハーマンの教えと大神の救いを求めて、次々とハーマンの住む村に集っていった。


 それから12日の間、ハーマンは人々の悩みを聞き、教え諭し続けた。
 そして、13日目の早朝、(両脇から弟子に支えられながら立ち続けていた)ハーマンはついに倒れ意識を失い、その夜に命を失った*2


 その後、ハーマンの教団は弟子たちによっていくつにも分かれ、次第にその存在は歴史の表舞台から消えていった。
 再びハーマンの教えが歴史上に姿をあらわし、その主役となっていくのにはハーマンの死から166年後、脚斬りの老聖者マアグロウが、少年皇帝ギュロスと出会うその時まで待つ必要があるのだった。

*1:元山賊の首領だった弟子が、その命を投げ出してハーマンと他の弟子たちを救ったといわれる

*2:“沈黙の大神”の言葉を聞いてから12年後、享年45歳であったと伝えられている

預言者ハーマンの足跡(中編)

 ハーマンは“七つの相を持つ神”を信仰する司祭によって治められた街で捕らえられたり、ジンの王の御前で討論をして怒りを買ったりと、さまざまな迫害を受けたために、長らく住んでいた“火の国*1”を離れ、北方にある“風の国*2”へと弟子たちを連れて渡っていった。
 “風の国”では湖のほとりに庵を持って、弟子たちと共に慎ましやかな生活をしながら、訪れる者たちに神の教えを諭し、その魂を救っていった。


 しかし、その中にはハーマンを論破し、侮蔑しようとして訪れる者たちもいた。
 あるとき、1人の魔術師がハーマンの庵を訪れた。
 その魔術師はハーマンに自分の魔術の力がいかに強大であるかを話し、“沈黙の大神”に仕えるものならば、さぞかし強大な奇蹟を起こせるだろうと、ハーマンを挑発した。
 ハーマンは微笑みながら天を指差し、大地を指差し、「たとえあなたの力がいくら強大であろうとも、大神の創りし世界の上では些事に過ぎない。あなたの“言葉”が作り出した炎は太陽に敵わず、あなたの“言葉”が吹かせた風も大地を揺るがす事はできない。そもそもその“言葉”さえも、あなたが大神から借りているものに過ぎないのだ」と言った。
 魔術師はハーマンの言葉に激昂し、それほど“沈黙の大神”が偉大であるのならば“言葉”を天使たちに奪われる事も無かっただろうし、もし私がお前を魔術で害しようとしても守ってくれるだろうなと叫び、ハーマンの前に立ち塞がり呪文を唱えようとした。
 驚いて魔術師を止めようとする弟子たちをハーマンは制して、魔術師に語った。
「私をあなたの魔術で殺したとしても、大神の言葉は雨が涸れ野に染み渡るがごとくこの大地に広がっていき、そして私たちの目からは消えたように見えても、残された大地には緑が芽吹き、その流れは大いなる海にたどり着く(このように神の言葉は多くの人々に影響を与え、言葉そのものも失われたり、揺らぐような事は無いのだ)。大神にとって全ては些事に過ぎない……天使らが“言葉”を盗んだことも、あなたが“言葉”の力を扱える事も、ここで私が倒れるかもしれないことも、どれも“沈黙の大神”の世界を歪めて運命を捻じ曲げていくようなことではない。ただ大神は世界を、我々を愛すがゆえに、その思うが侭にさせてくれているのだ」
 ハーマンの言葉と態度に魔術師はしばし沈黙した。そして、ぽつりぽつりとハーマンにいくつかの問いかけを、呟くかのように言った。ハーマンはその問いに、ひとつひとつ、優しく丁寧に答えていった。最後に魔術師はハーマンにこのように問いかけた。
「力に溺れ、“言葉”をみだりに使い、そして預言者たるあなたを害しようとしたこの私をも、大神は許してくれるのでしょうか」
「あなたがその罪に気づき、悔いを私に述べたその時から、あなたは救われうるものとなっている。大神の愛は全てに与えられている……ただ、(受け手側に)その愛を受け入れようとしているかどうかの違いがあるのだ」
 そして魔術師は、ハーマンに跪いて涙し、“沈黙の大神”への帰依を誓った。


 四年の間、ハーマンは弟子たちと共に庵での生活を過ごした。
 しかし、湖畔の平和な村も次第に戦乱に巻き込まれてゆき、その災いから逃げるようにハーマンとその弟子たちは旅に出た。
 その旅の途中にもさまざまな苦難*3に出会うこととなるのだが、ハーマンはその信念と説話と“沈黙の大神”の恩寵*4をもって、切り抜けていった。


 その旅の中で、ハーマンは一つの町にたどり着いた。
 その町はハーマンたちが訪れる少し前に魔獣*5によって滅ぼされていた。弟子たちの中には魔獣がすでに去った後であることに安堵の声を上げるものもいたが、ハーマンはそんな弟子たちを叱った。
「憎しみと哀しみの魔獣によって滅ぼされた街を前にして、我々だけが無事でいることを喜ぶ事ができるであろうか」
 廃墟の中で、ハーマンは1人の少年と出逢った。
 その少年は薄汚れた格好で街の中に呆然と立ち尽くしていた。弟子たちはこの魔獣によって家族と故郷を失ったものだろうと思い保護したのだが、少年はハーマンに出逢うと、なぜこの街は魔獣によって滅ぼされなければならなかったのかと問いかけた。
 ハーマンは大人と接する時と同じように、少年の言葉に対して真剣に答えた。
 問答の最後にハーマンが少年の名を聞き、それに答えると共に、少年は疲れ果てたのか眠り崩れてしまった。弟子が少年を寝床に運ぼうとすると、ハーマンは喜びの声を上げ、弟子にこのように語った。
「ついに私は、大神の真の言葉を伝えるべき同志を得たぞ」
 そしてその少年はハーマンの弟子のひとりとなった。少年の名はリュージヤといった。

*1:荒野と砂漠の大陸。ジンなどの炎の妖精たちと、人間が多く住む。

*2:森に多く囲まれた大陸。古来から人間が多く住み、後に帝國が建国される。

*3:山賊に襲われ、その首領を諭して弟子にしたり、ある国の王の前で将軍と賢者と占い師と討論を行なわされて論破し、その国の臣に怨まれるなど

*4:つまり、幸運

*5:“奈落”からルーンを通して呼び出された魔物。魔術師たちが召喚して使役する事がある。

 オープン例会はどうやら上手くいったようです。
 私は裏卓(ゲストが入らない会員専用卓)で久々に熱血専用のプレイヤー。
 プレイヤー皆が好き勝手やったのでひどいことになりました……さすがにヒーローの必殺奥義が“ジェノサイド*1”という名前だというのは無いだろw
 ……まあ、こちらも自分の必殺技が“マキシマムスラッシュバスター”という、筋●バスターの体勢から、首が動いてそこから脱出できるという弱点を顎を剣で押さえる事で乗り越えて決めるという、なんかアレな技だったし、新奥義“トライアングルジェノサイドワールド”の演出*2でもひどいことをやってしまったし……人のことは言えないかもしれませんw


 まあ、ともかく、オープン例会が成功した事はいいことです。
 あとはこれが継続して行えるかが勝負でしょうね。
 みんな頑張れ。

*1:「今年はイナゴの当たり年だ!」という叫びと共に大量のイナゴが敵を食い荒らすという、どう見ても悪役専用の技

*2:「天と地からイナゴが現れ、最終的には15万の敵兵の体を食い破って、イナゴが現れた……これがトライアングル!」